🏠 みんなの相関図 (一般の方向け) 家督相続とは

📄 相続手続きガイド

📖 連載 かしのき事務所の事件簿 (1)-2

家督相続とは?
長生きだったせいで、相続人が60人に増えた

公開: 2026-07-30 | 監修: 柏原昌之 (司法書士/花の丘相続遺言サポート 代表)

結論: 家督相続とは、戸主の地位と家の財産を、原則としてひとり (多くは長男) が受け継いだ かつての相続のしくみです。昭和22〜23年ごろを境に、現在の「相続人みんなで分ける」相続へと変わりました。

そして、この境目は今も効いています。亡くなった時期がどちら側かで、相続人がひとりのままか、何十人にも枝分かれするかが変わる からです。

前回、倒壊寸前の空き家の相続人が60人を超えた話をしました。「なぜ、そんなに増えたのか」——答えは、亡くなった方が とても長生きだった ことにあります。長寿とこの制度の境目が、どう結びつくのか。戸籍を開くところから続けます。

1. 実話の続き: 戸籍を開いたら、7つの枝が広がっていた

※ 実際の相談をもとに再構成した事例です (年代・地域・人数などの属性を変えています)。

前回のあらすじ

危険な空き家の所有者は、とうの昔に亡くなっていた。市が調べた相続人は40人以上。全員に「あなたは相続人です!」という手紙が届き、そのうちのひとりが手を挙げて当事務所へ——。→ かしのき事務所の事件簿 (1)-1

まず、戸籍を集めるところから

相続人を確定する作業は、戸籍を集めることから始まります。亡くなった方の出生から死亡までをさかのぼり、そこから子・きょうだい・甥姪へと枝をたどっていく。ご依頼を受けて、まずこの戸籍収集に着手しました。

戸籍が語ったこと——明治生まれ、そして長寿

登記簿に残っていた所有者は、明治生まれ の方でした。そして とても長生きをされた

相続の実務では、この「いつ亡くなったか」が決定的な意味を持ちます。亡くなった時期によって、適用される相続のルールが違う からです。

分岐点——家督相続だったなら、ひとりで終わっていた

もしこの方が 家督相続の時代に亡くなっていたら、話はまるで違っていました。家督相続では、きょうだいが何人いようと 原則ひとり (多くは長男) が家の財産を受け継ぐ。ひとりが持っていた財産を、ひとりが受け継ぐ。だから 相続人の数は増えません。とてもシンプルです。

ところが、この方は長生きをされたために、その境目を越えてから亡くなりました。つまり、現在と同じ「みんなで分ける」相続が適用されることになったのです。

7人のきょうだい、そして全員がすでに他界

戦後のこの世代は、きょうだいが多い。5人、6人、7人——珍しいことではありません。この家も 7人きょうだい でした。

遺言もなく、遺産分割協議もされていない。ということは、7人全員に持分がある 状態のまま、何十年も止まっていたことになります。

しかも、その7人も すでに全員が亡くなっていました。すると今度は、7人それぞれの子へと権利が移っていきます (→ 数次相続)。7つの枝が、それぞれ枝分かれしていく。

6人で、枝を分けた

7つの枝をひとりで追うのは、現実的ではありません。そこで 花の丘相続遺言サポートのメンバー (司法書士4人・行政書士2人) で受けることにしました。

「あなたは、このきょうだいの子孫を担当してください」

きょうだいの枝ごとに担当を割り当て、6人が同時並行で戸籍をたどっていきました。

半年——そして、相続人が確定した

それぞれが担当の枝を追い、半年をかけて、相続人をきちんと見つけ出しました。

相続人は、ここでようやく確定しました。ですがこれは、相続手続きの第1段階が終わった にすぎません。次に待っているのは、確定した全員で合意をつくる段階です。

📖 この話には、続きがあります

見つけ出した相続人たちと、これからどう話を進めるのか——この続きは 「かしのき事務所の事件簿 (1)-3」 で (準備中)。

2. 家督相続とは

家督相続 とは、かつての民法にあった相続のしくみで、「戸主」という家の代表者の地位と、家の財産を、原則としてひとりが受け継いだ ものです。

① 受け継ぐのは、原則ひとり

受け継ぐ人は 多くの場合、長男 でした。地位と財産がセットで移るのが、いまの相続との大きな違いです。

② ポイントは「分けない」こと

家の財産をばらばらにせず、次の代表者にまとめて渡す考え方でした。だから 相続のたびに権利者が増えることがなかった のです。

3. 家督相続はいつまで?

家督相続は、昭和22〜23年ごろを境に 廃止され、現在の相続へと移り変わりました。

⚠️ 「何年何月何日から」と一律には言いにくい

この時期は法改正が段階的に行われたため、境目を一律に言い切るのは難しい 面があります。ご自身の事案がどちらのルールになるかは、法務局または司法書士にご確認ください。

大切なのは、亡くなった時期がこの境目のどちら側か で、相続人の範囲がまるで変わるという点です。実話のように、長生きをされたことで境目を越える ケースは実際にあります。

4. 現在の相続と何が違うのか

家督相続 (かつて) 現在の相続
受け継ぐ人 原則ひとり (多くは長男) 配偶者・子など、相続人全員
財産の分け方 分けずにまとめて承継 話し合い (遺産分割) で分ける
権利者の数 増えない 世代をまたぐごとに増えていく
手続きの重さ 比較的シンプル 全員の確定と合意が必要

この表のいちばん下から2行目が、実話で起きたことそのものです。7人 → その子 → さらにその子 と、放置された年月のぶんだけ枝が広がっていきました。

5. なぜ、今も家督相続の話が出てくるのか

制度がなくなっても、昔の相続がそのまま手つかずで残っている 不動産は少なくありません。名義が何代も前のままのケースです。→ 相続登記をしないとどうなる?

そうした古い相続を今から手続きするとき、「その相続がいつ発生したか」によって、当時のルールで考える必要が出てきます。だから今でも家督相続が話題になるのです。

⚠️ 「うちは長男が継ぐ家だから」は危険

家の中でそう決まっていても、境目を越えていれば、法律上はきょうだい全員に権利があります。特定の方が取得するには、相続人全員での 遺産分割協議 が必要です。

6. 自分の家に関係あるか、どう調べるか

① 登記の名義を確認する

登記事項証明書 を取って、名義が誰のままか・いつの登記かを確認します。

② 亡くなった時期を戸籍で確かめる

名義人が亡くなっているなら、その方の戸籍 を取り寄せ、いつ亡くなったか を確認します。ここが境目の判断材料になります。

③ 古い戸籍が必要になる

除籍謄本・改製原戸籍 が必要になることが多くあります。手数料は自治体・時期により異なるため、請求先の市区町村でご確認ください。→ 戸籍の集め方

④ 人数が多そうなら、早めに専門家へ

きょうだいが多い・すでに亡くなっている方がいる場合は、早めにご相談ください。実話のように人数が膨らむと、時間も費用も大きくなります。

🌿 枝がどこまで広がっているか、見える化する

誰が相続人かを、その場で図にしてみる

実話でも、まず「誰が相続人か」を図にして全体をつかむことから始まりました。「みんなの相関図」なら、名前 / 生年月日 / 続柄を入れていくだけで 相続関係の図 を自動で描けます。登録不要の体験デモで、まず試せます。

※ 登録時のカード入力なし。ツールはあくまで家族関係の図の作成にお使いいただけます。相続人の確定や法的な判断を行うものではありません。

7. 古い相続を調べる 4 ステップ

名義が何代も前のままの不動産を、今から手続きするときの流れです。

1 登記の名義と時期を確認する

登記事項証明書 を取り、名義が誰のままか、いつの登記かを確認します。

2 名義人が亡くなった時期を戸籍で確かめる

除籍謄本などを取り寄せ、亡くなった時期を確認します。家督相続の時代かどうかの判断材料 になります。

3 相続人の枝をたどる

現在の相続が適用される場合は、きょうだいやその子へと枝が広がります。相続関係説明図 に整理すると漏れにくくなります。

4 人数が多いときは早めに専門家へ相談する

枝が多い事案は 戸籍収集だけで長期間かかります。法的な判断が必要な場面も多いため、司法書士へご相談ください。

あわせて読みたい

古い相続を動かすための、次の一歩になる記事です。

家督相続 — よくあるご質問

Q.家督相続とは何ですか? +

かつての民法にあった相続のしくみで、戸主の地位と家の財産を原則としてひとり (多くは長男) が受け継ぐものです。

Q.家督相続はいつまでの制度ですか? +

昭和22〜23年ごろを境に廃止され、現在の相続に移り変わりました。時期の判断は事案により異なるため、法務局・司法書士にご確認ください。

Q.家督相続と今の相続は何が違いますか? +

家督相続は原則ひとりが分けずに受け継ぐのに対し、現在の相続は相続人全員が権利を持ち、話し合いで分けます。世代をまたぐと権利者が増える点が大きな違いです。

Q.祖父の名義のままの土地があります。家督相続になりますか? +

名義人が亡くなった時期によって変わります。まず戸籍で亡くなった時期を確認してください。判断が難しい場合は司法書士にご相談ください。

Q.長男が継ぐと家族で決めていましたが、それで手続きできますか? +

現在の相続が適用される場合、法律上は相続人全員に権利があります。特定の方が取得するには、相続人全員での遺産分割協議が必要です。

Q.なぜ相続人が何十人にもなるのですか? +

相続登記をしないまま相続人が亡くなると、その相続人へと権利が移り、世代をまたぐごとに枝分かれしていくためです。きょうだいが多い世代では一気に増えます。

Q.古い相続の戸籍はどこまでさかのぼりますか? +

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどります。古い相続では除籍謄本や改製原戸籍が必要になることが多く、複数の市区町村にまたがることもあります。

Q.相続人の調査にはどのくらい時間がかかりますか? +

事案によります。相続人が多数にのぼるケースでは、複数人で分担しても半年ほどかかることがあります。

Q.相続人が多すぎて自分では手に負えません。どうすればいいですか? +

早めに司法書士などの専門家にご相談ください。人数が多い事案では、枝ごとに分担して調査を進めるなどの方法があります。

Q.家督相続の時代の相続でも、今から登記できますか? +

当時のルールに基づいて手続きすることになります。必要書類や進め方が通常と異なる場合があるため、法務局・司法書士にご確認ください。

✨ 古い相続を動かす、最初の一歩

誰が相続人かを、その場で図にしてみる

何代も前の名義のままなら、まず相続人の全体像をつかむことから。「みんなの相関図」なら、名前 / 生年月日 / 続柄を入れていくだけで自動描画。
登録不要の体験デモで、まず試せます。

※ 登録時のカード入力なし。14 日経過後、何もしなければ 自動でサービス停止 (= 0 円のまま)
相続人の確定は法的な判断を伴うため、ツールはあくまで家族関係の図の作成にお使いいただけます。

この記事の監修者

柏原 昌之 (かしはら まさゆき)

司法書士。司法書士法人かしのき事務所 代表・花の丘相続遺言サポート 代表 (埼玉県さいたま市)。相続放棄・相続登記・遺言をはじめとする相続手続きを多数取り扱う。「専門家に頼む前に、自分でできるところまでやってみたい」という方を応援するため、「みんなの相関図」(運営: かしのき研究所) の監修を務める。

古い相続では、いつ亡くなったか が相続人の範囲を大きく左右します。名義が何代も前のままの不動産に心当たりがある方は、まず登記と戸籍の確認から。判断に困るときは — 無料 Zoom 相続相談 (初回 90 分) で、早めにご相談ください。

免責事項

本記事は 2026 年 7 月時点の法令・制度に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。本文中の事例は、実際の相談をもとに年代・地域・人数などの属性を変えて再構成したものです。適用される相続のルールは相続が発生した時期により異なり、家督相続にあたるかどうかの判断も個別の事情によります。具体的な手続きは司法書士・法務局にご確認ください。戸籍等の手数料は自治体・時期により異なります。税金の取扱いは司法書士の専門外のため、税理士にご確認ください。「みんなの相関図」は家族関係の図を作成するツールであり、相続人の確定や法的な判断、登記申請を行うものではありません。